窓の外にはきれいな夜景。
どうやらここは、やたら高いビルの中のようだ。
私は、どっかの映画で見たような高級っぽいレストランの、窓際の席に座っているのだった。
目の前の皿には、デンッと置かれたブ厚いステーキ。
今、まさに焼いてきましたと言わんばかりに、ジュゥジュゥと肉汁が音を立てている。
肉の横には、マッシュドポテトとよく分からん緑色の野菜が添えられている。
が、野菜は正直どうでもよろしい。
私は香ばしい肉の匂いをふんふん嗅ぎながら、
「こんなブ厚いステーキ、見た時ない!!」
と、目をまん丸くして、思わず叫んでしまった。
だって、高さが5cmくらいあるんだよ。おかしいよ。
ほんとに私が食べていいのか?
「めちゃめちゃ儲かったから、今日は好きなものを好きなだけ食べるんだ。」
と、目の前に座っている馨が、なにやら得意気な顔をしながら答える。
どうでもいいが、食事を食べる前から、もうだいぶ酒を飲んでいる様子。
大丈夫か?
しかし、今問題とされるのは、このステーキ。
確か、ナイフとフォークは外っかわから使うんだよな・・・
そのまま手づかみで、がるると野獣ばりに肉をむさぼりたい衝動を我慢しつつ、
場所が場所だけに、私はちょびっと気取ったかんじで、肉を切り分けた。
散々ステーキをむさぼり食べた私たち二人は、浅草っぽい街の中を歩いている。
腹には確かな満足感。これ以上ないくらいの至福じゃ。
馨はあんなに酒を飲んでいたくせに、エスコートが完璧で、やたらジェントルメンなかんじだ。
ネタじゃなくレデーファーストなんかしちゃって、不気味・・・この人、偽者なんじゃあないの?
と思ってたら、黒いコートにいっぱい猫の毛がついてた。
よかった、本物だ。
気がつけば古めかしいカフェのまん前。
老舗で、知る人ぞ知るという雰囲気をかもし出している感じ。
「ここはプリン好きには有名な店で、プリン評論家も舌鼓を打つ、プリンの中のプリン、プリン・ザ・プリンがあるらしい。さあ、ここで、思う存分プリンを食べるんだ!」
と、馨が言う。
なぬー!プリン・ザ・プリンだとー!ぜひとも食べなくては。
と思いつつ、馨はわざわざこのお店を調べてくれたのか・・・と、うれしく思った。さすがジェントルメン。
そして、私たちはそそくさと店の中に入って行った。
「プリン・ザ・プリンをくれ!」
席に着くなり、声高々にウェイトレスに言うと、
「かしこまりました」
と、ちょっと困った顔をされながら言われた。
きっと、メニューを渡す前に注文したから、ビックリしたんだろう。
「早く来い。早くこ〜い。」
と、念仏のように唱えていると、かばんの中で携帯が鳴りはじめた。
なんだ、トミーから電話か?土産にプリンを買って行ってやろう。
と、携帯を探すと・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
目が覚めた。
今までのことは全部夢だったらしい。くそー。
そして、本当に携帯がなっていた。
誰だよ、こんちくしょう。もうちょっとで、プリン・ザ・プリンが食べられるところだったのによう。
と思いながら、電話に出ると、
「肉まん、何個買ってったらいいかなー?」
と、中国語でいきなり聞かれる。
時計を見ると、朝の6時。
私は肉まんを買ってこいと誰かに命令した覚えはないぞ。あんた誰?ってかんじだ。
もちろんその電話は間違い電話。
せっかくの至福の夢が、間違い電話で邪魔されるなんて、認めんぞー。
と、私は2度寝して、続きを見ることにした。
運がいいと、続きが見られることがたまにあるのである。
しかし、今日はそうはいかなかった。
なぜかバッチリ目が覚めていて、全然寝れそうにないばかりか、お腹も空いてきたじゃあないか。
「ステーキ、馨、プリン。ステーキ、馨、プリン。」
と頭の中で繰り返してみるが、いくらやってもダメダメ。
それで私はあきらめて、朝ごはんに肉まんを買いに行ったのだった・・・
くそー!屈辱!